『ガンニバル』原作漫画ネタバレ全巻まとめ|最終回の結末・白銀と食人の真相・B話まで徹底解説!

『ガンニバル』原作漫画ネタバレ全巻まとめ|最終回の結末・白銀と食人の真相・B話まで徹底解説!

ディズニープラスで実写ドラマ(シーズン2まで)が配信されて話題の『ガンニバル』。

この記事では、原作漫画・全13巻のあらすじをネタバレ付きでまとめつつ、その後の物語が描かれた後日譚『ガンニバル B話』の内容も丁寧に解説しています。

読み進めるほどに目が離せなくなる展開と、圧倒的な狂気…。

ここまで倫理観を揺さぶられるマンガって、正直はじめてかもしれません。めちゃくちゃ面白いんだけど、正直、読んだあと数日はお肉が食べられなくなりました…笑

グロテスクで残酷な描写も多いけれど、そこに込められた「人間とは何か?」という問いかけがずっしりと響く、そんな作品です。

実写ドラマ『ガンニバル-2シーズン-』の全話ネタバレ考察解説はこちら

目次

『ガンニバル』1巻ネタバレ

「ガンニバル」1巻

警察官の阿川大悟(あがわ だいご)は、山と川に囲まれた田舎の村・供花村(くげむら)に、新しい駐在として赴任することになった。
一緒にやってきたのは、妻の有希(ゆうき)と娘のましろ。

ましろは小学生。
ある出来事がきっかけで言葉を話せなくなり、笑うこともなくなってしまった。
何を考えているのか、表情からは読み取れない。

そんな家族にとって、供花村は新しいスタートの場所になるはずだった。
駐在所を兼ねた住まいでの暮らしは、最初こそ、村人たちのあたたかい歓迎で始まった。
みんな優しくて、どこか懐かしい雰囲気すらある。

――でも、村の空気には、どこか奇妙な“圧”がある。

供花村を支配している後藤家の人間たちだけは、やけに高圧的だった。
そして、大悟の前任の駐在・狩野治が突然姿を消したという話を耳にする。
失踪の直前、彼は後藤家に現れてこう叫んだらしい。

「おまえらは人を喰っている!」

……正気とは思えない言葉だ。

そんなある日、後藤家の当主・銀の遺体が、山の中で惨殺された状態で発見された。
次期当主の恵介や後藤家の人間たちは「熊の仕業だ」と主張するけれど、遺体には明らかに“人間の噛み跡”があった。

さらに奇妙な出来事が重なる。

ある夜、突然いなくなったましろが、何事もなかったかのように帰ってきた――
でも、彼女の手には“人間の指”が握られていた。

鑑識の結果、それは死んだ銀の指ではなかった。
ましろは、山の中で“人の死体を運ぶ巨体の老人”に出会い、その指を渡されたのだという。

やがて行われた“銀の葬式”。
後藤家の人間たちは全員、白い頭巾をかぶっていた。

そして葬儀の場に、失踪した狩野治の娘・すみれが姿を現す。
彼女は堂々と棺の中身を確かめ、「中に死体は入っていない」と暴露。
その場は騒然となる。

すみれは大悟にこう訴える。
「父は後藤家を調べていた。あの家は“人肉を食べている”。お願いだから、真実を確かめてほしい」

――決意を固めた大悟は、後藤家の本家に単独で乗り込む。

だが、そこでは猟銃を持った後藤睦夫たちが待ち構えていた。
銃声、乱闘、混乱――そしてその最中、
“大悟の目の前に現れた”のは、後藤家が恐れている存在、“あの人”と呼ばれる異形の老人だった。

その“あの人”は、迷いなく鎌を振りかざし、大悟の額を切り裂く。
大悟は、その場で気を失ってしまう。

一方で、鑑識官・中村が分析していた“あの指”の正体も明らかになろうとしていた。
留守電に残された中村の声が告げる。

「あの指は…失踪した狩野治のものだ」

――供花村の闇が、ゆっくりと、しかし確実に大悟を飲み込もうとしていた。

1巻の筆者の感想

“あの人”の正体、あれは本当に気になりますね。
ゾンビのような風貌に加えて、無表情で目は虚ろ。でも、どこか「意思」を持って行動しているようにも見えました。

登場早々、誰かを喰らっていたのも衝撃的でしたが、何よりも驚いたのは、大悟の娘・ましろに人間の指を渡すという行動。
あれは単なる野生的な本能とは思えません。ましろに何かを託したのか、あるいは“仲間”として認識しているのか…。意思をもって接触している可能性すら感じられます。

そして、その指がまさかの“失踪した狩野治のもの”だと後に判明するわけで…。
あの人物がただの怪物ではなく、“供花村の闇そのもの”を象徴する存在であるような気がしてなりません。

冒頭からグロテスクで不気味な世界観が全開で、
サスペンスホラーとしての引き込み方はまさに圧巻でした。

『ガンニバル』2巻ネタバレ

「ガンニバル」2巻

川で気を失っていた大悟は、村人に発見され、なんとか一命を取り留めました。
病院で意識を取り戻した大悟は、「大きな老人に鎌で頭を切られた」と証言します。
――もちろんそれは、“あの人”のこと。

けれど、後藤家の人間はその存在を隠そうとします。
「別の者がやった」と話をすり替え、表向きには謝罪してきました。
このあたりから、後藤家の“異様なまでの沈黙”に、大悟自身も疑念を深めていくようになります。

その頃、鑑識官の中村は大悟からのメールに呼び出されます。
ところが、そこに現れたのは大悟ではなく、彼のスマホを手にした後藤睦夫。
中村が残した留守電――つまり、指が狩野治のものだったという内容を聞かれてしまっていたのです。

睦夫は中村の指を折って脅し、大悟を呼び出させます。
その後、大悟は中村に会いに向かう道中で、睦夫の襲撃を受けます。
睦夫は散弾銃を構えていて、一歩間違えば命が危なかった。

激しい争いの末、睦夫はついに観念し、自首を決意。
そしてこう語ります。

「狩野治を殺したのは俺だ」

その後、狩野の遺体が発見され、事件は一応の“解決”を見せました。

しかし、これで終わるわけがありません。
大悟たちは供花村に残る決意をしますが、すぐにその選択が揺さぶられる出来事が起こります。

ある日、自宅の外壁に赤いペンキで――
「人殺し」
という言葉が無残に書き殴られていたのです。

怒りに震えた大悟は、後藤恵介を問い詰めます。
けれど、恵介は「俺たちじゃない」と静かに否定。
一体、誰がこんなことを…? 村の深い闇が、また少し顔を覗かせた瞬間でした。

そして――
物語は5か月前、大悟とましろの過去へとさかのぼります。

かつて、大悟の娘・ましろが、性犯罪歴のある男・今野翼の部屋にひとりで行ったことがありました。
ましろは、世間から拒絶されていた今野にどこか同情していて、無防備に部屋へ足を運んでしまったのです。

その後を追ってきた大悟は激怒。
部屋に踏み込み、今野を殴り倒します。

しかし追い詰められた今野は、刃物を手にましろに迫り、「一緒に死のう」と言い出します。
瞬間、大悟は迷わず銃を撃ち、今野をその場で射殺しました。

倒れた今野の返り血を浴びたましろは、その場で気を失い――
それ以来、ショックから言葉を失ってしまったのです。

あの時の出来事が、今もましろの心に深い傷として残っている。
それを抱えながら、父娘は“供花村”というさらなる闇に足を踏み入れてしまったのでした。

2巻の筆者の感想

まさかの展開でしたね…。
睦夫が自首するとは思ってもみませんでした。

でも彼の言葉や行動を見る限り、本心では「後藤家を守りたい」ただそれだけだったのかもしれません。
実際のところ、狩野を殺したのは睦夫ではなく、“あの人”だった可能性が高そうです。

それでも罪を背負ったのは、後藤家の一員としての“覚悟”だったのでしょうか。
この村の、一族の結束――いや、狂信にも似た忠誠心が本当に不気味です。

それにしても、大悟とましろの過去はあまりにも重たすぎました。

ましろにとっては、信頼しかけていた相手が目の前で撃たれるという、あまりに強烈な体験。
たとえ相手が犯罪者だったとしても、幼いましろにとっては“知り合いが目の前で死んだ”という事実だけが心に刻まれてしまったはずです。

言葉を失ってしまったのも、無理はないですよね…。
大悟の正義と、ましろの心――このすれ違いが、今も物語に影を落としている気がします。

『ガンニバル』3巻ネタバレ

大悟は少しずつ、村人たちに違和感を抱きはじめます。
どこかよそよそしくて、何かを隠しているような態度――。
最初は親切だった人々の表情に、どこか張り詰めたものを感じていたのかもしれません。

そんな中、狩野すみれは思い出していました。
失踪した父のこと、そして精神を病んで入院中の母・幸子(ゆきこ)が、村人たちを「怖い」と怯えていたことを。

一方、大悟は村の古老・さぶさんに対し、つい「めんどくせえ」と口にしてしまいます。
そのひと言がきっかけで、村全体から冷たくされるように。
最終的には、さぶさんにきちんと頭を下げて謝罪しました。

その頃、大悟のもとに不思議な電話がかかってきます。
それは、失踪した狩野治が最後に使っていた“衛星電話”からのもの。
電話の主・寺山京介は、かつて狩野に村の闇を暴く手助けをしていた男でした。

大悟は村から少し離れた場所で京介と対面。
彼が仮面を外すと、そこには衝撃的な姿が――
顔の左半分と鼻が喰われ、骨すら露わになっていたのです。

京介は語ります。
自分は幼少期、供花村の「奉納祭」で生贄として差し出され、村人の誰かに顔を喰われたと。
その後、ある女性に助けられて、村から逃げ出したのだと――。

村ではちょうど、来乃神を祀る“奉納祭”の準備が進められていました。
大悟はその流れで、神社の跡取りである宗近と対面します。

宗近は、かつてこの村の祭では本当に“人”を神に捧げていたことを認め、
「ここにいてはいけない。すぐに村を出るべきだ」と忠告してきます。

大悟は狩野の協力者だったというオカルトサイト運営者・宇多田のもとにも足を運びます。
彼からは、供花村で異常なほど“死産”が多いという話を聞かされます。

死産とされながら実は生きていた子どもたち――
戸籍にも記録されず、存在を隠されたまま、“奉納祭の生贄”として育てられているのではないかという、
にわかには信じがたい結論にたどり着いていきます。

そんななか、さぶさんの娘が大悟に涙ながらに訴えかけてきました。

「産婆だった後藤銀に、生きていたはずの私の息子を“死産”にされた。
銀は、子どもを連れていったの。お願い、探してあげて…」

大悟はついに確信します。
後藤家が管理する山奥の洞窟――そこには地下牢が存在し、“あの人”が潜んでいる。

そして、さらに奥の牢には――
奉納祭で“神に捧げるため”に飼われている3人の子どもたちの姿があったのです。

村の静かな日常の裏側で、
恐ろしい“儀式”と、無数の命が犠牲になっている現実――
それが今、少しずつ暴かれようとしていました。

3巻の筆者の感想

顔面を喰われた謎の男――あの登場シーンは本当に衝撃的でしたね。
しかも彼の過去が“奉納祭で生贄として顔を喰われた子どもだった”なんて…。あまりに残酷で言葉を失いました。

そして、地下牢に監禁されていたのがただの子どもではなく、
「神に捧げるために飼われていた生贄の子どもたち」だったという事実も、想像をはるかに超えるショッキングさでした。
ここまでくると、もう村全体がひとつの巨大な“儀式の装置”に思えてきます。

村人たちの裏表の激しさもかなり怖いですよね。
普段は穏やかで優しそうに見えるのに、ちょっとしたことで一斉に冷たくなったり、圧をかけてきたり。
中でも、さぶの不気味さは群を抜いていて、何を考えてるのかわからなくてゾッとします。

…正直、こんな村には絶対住みたくないです(笑)。
でも、物語としては最高に引き込まれます。恐怖と興味のバランスが絶妙すぎて、目が離せません。

『ガンニバル』4巻ネタバレ

後藤家の中では、代々続く“あるルール”が存在していました。
それは――「一族以外の人間は、人間として扱わない」という、あまりにも異常な価値観。
この狂った思想が、村を支配する一族の根幹に根づいていたのです。

そんな後藤家と通じていたのが、表向きは親切な“村人たち”。
彼らは密かに、大悟の行動を後藤家に報告し続けていました。
その中でましろは、ある村人によって勝手に外へ連れ出されてしまいます。
当然、大悟と有希は心配で気が気じゃなくなります。

「もう、この村に長くはいられない」
大悟はそう判断し、有希とましろを元同僚・山伏がいる街へ避難させる決意をします。
山伏は刑事時代の上司で、唯一信頼できる存在でした。

大悟はその間、村で開かれる“奉納祭”に乗じて、後藤家の拠点を山から監視し、
子どもたちが監禁されている場所を突き止めるつもりでした。

…しかし、そう簡単にはいきません。
山中で行動していた大悟は、すぐに岩男たちに見つかり、捕まってしまいます。

拘束された大悟は、後藤家当主・恵介の前へと連れて行かれます。
そこでは酒を交わすふりをしながら、あえて“食人”の話題で恵介を挑発。
緊張が高まる中、龍二たちが猟銃を手にして大悟に向ける瞬間――

そこへ通報を受けた署長が駆けつけ、
大悟は間一髪のところで救出されました。

一方その頃、後藤家の弟・洋介は、地下牢で生贄として“あの人”に喰われる運命にある子どもたちの世話をしていました。
無垢な瞳でこちらを見る男の子の姿に、洋介の心は揺さぶられます。

「この子を、犠牲にしてはいけない」

そう言って、洋介は静かに涙をこぼします。

彼は決意します――
奉納祭で生贄にされる男の子を、逃がすことにしたのです。

人を“喰う”ことで成り立ってきた村の儀式。
その中にあって、洋介のこの選択は、小さなけれど大きな“希望の兆し”でした。

4巻の筆者の感想

オカルトサイトを運営している宇多田さん、ついに子どもたちの監禁場所を突き止めましたね。
でも……正直ちょっと不安です。
あの人、このまま“真相に触れすぎて”喰われるんじゃないかって、予感がしてなりません。

というのも、“あの人”の正体が少しずつ見えてきていて――
どうやら彼は後藤銀の長男であり、本来は後藤家の「本当の当主」という扱いらしいんです。
あの無表情でずっと笑っている“狂い病”も、村では神聖視されていたのかもしれませんが、
こちらから見るとただただ恐怖でしかありません。

それにしても、この村のドス黒い秘密の数々――
知れば知るほど、背筋がゾッとしますよね。

中でも気になるのが藍が握っている“ある秘密”
彼女は何を知っているのか?
なぜあれほど静かに、でもどこか達観したような目で全体を見ているのか…。

藍の過去や、“あの人”とのつながりが明らかになった時、
この物語はさらに一段深いところへと踏み込んでいきそうな気がします。

『ガンニバル』5巻ネタバレ

「ガンニバル」5巻

大悟は信頼できる協力者として、オカルトサイト運営者・宇多田を山に潜ませていました。
宇多田は後藤家の岩男のあとを追い、ついに――子どもたちが監禁されている洞窟、地下牢の存在を突き止めます。

一方で、大悟は署長に連れられ、事件対応で集められた県警の刑事たちの前へ。
彼はそこで、供花村で起きていること、“あの人”と呼ばれる存在について、すべてを語ります。

その話の中で明かされたのは、18年前に後藤藍――恵介と洋介の母が失踪していたという事実。
銀は実の娘である藍を“ゴミ以下の存在”と呼び、徹底的に排除しながら、恵介たちを“選ばれし後継”として育ててきたのでした。

その頃、洋介は地下牢の男の子を助け出そうと動き出します。
しかし、大悟の報告により「後藤家に裏切り者がいる」と察した岩男は、疑いの目を洋介に向けてしまい、外へ出られないように封じ込めてしまいます。

そんな中、大悟は過去に指を折られた中村医師を訪ねます。
彼から聞かされたのは、“狂い病”=クールー病に関する衝撃的な事実。

かつて後藤家の中には、**人を喰ったことが原因で廃人になり、笑いが止まらなくなる病(クールー病)**にかかった者がいた。
銀自身も晩年はこの病に苦しみ、
その姿を見かねた元駐在・狩野が病院に連れていったことで、後藤家による報復が始まったというのです。

さらに中村医師は、“あの人”が患っているクールー病について、
ただの病ではない。進化した可能性がある」と、大悟に警告します。

そして、署長からも重大な証言が――
「後藤家と関わるな」という祖父からの教えは、“病気が感染するかもしれない”という恐れから来ていたというのです。

“あの人”は、戦時中に生まれた銀の子どもで、戸籍のない存在。
だからこそ、その存在は村でも“神”のように語られ、秘密にされ続けてきたのかもしれません。

大悟はこの闇に終止符を打つべく、特殊部隊を動かすための決定的な証拠を集めようと動き出します。

その鍵を握る人物――寺山京介。
幼少期に“あの人”に顔を喰われた過去を持つ彼に協力を求めます。

そして衝撃の事実が明らかに。
なんと、京介は実は生きていた後藤藍と一緒に暮らしていたのです。
かつて村から逃げ出せたのは、藍が自分を助けてくれたからだった――と。

京介は藍から真実を聞き出そうとしますが、藍は
「私は村にも、恵介たちにも守られている」
と、何とも意味深な言葉を残すだけ。

いっぽう、神主の血を引く宗近もまた、儀式を止めさせようと恵介を説得しますが、その説得は失敗に終わります。

そして、再び――
大悟はたったひとりで、証拠をつかむために供花村へ戻る決意を固めました。

今度こそ、村の闇の核心へと踏み込む覚悟をもって――。

5巻の筆者の感想

5巻はもう、ページをめくる手が止まりませんでした。
村の不気味さと後藤家の狂気がさらに濃くなって、読んでいて背筋がゾクッとする瞬間が何度もありました。

まず印象に残ったのは、宇多田の行動力とその危うさ
彼が洞窟=地下牢を突き止めるシーンには、希望と同時に「これ以上踏み込んだらヤバいぞ…」という緊張感が走ります。
真実に近づく者が“喰われてしまう”という、ガンニバルならではの恐怖がずっと付きまとっていて、まさに“命がけの調査”。

そして、狂い病=クールー病の存在が現実味を帯びてきたのも、今巻の大きな転換点。
「食人」というテーマが単なるホラーではなく、医学的にも恐ろしい伝染病として描かれることでリアリティが倍増していました。
“あの人”の存在が、村人たちにとってどれだけ信仰と畏怖の対象になっているのか――それが恐ろしいほど伝わってきます。

恵介と洋介の母・藍の失踪、
銀による支配と洗脳、
村人の二面性、
誰が味方で誰が敵なのかわからなくなるスリルも加速していて、この巻から明らかに物語が次の段階に進んだ感じがします。

そして何より、後藤家内部に“裏切り者”がいるかもしれない、という描写。
洋介の葛藤と良心が見えてきたことで、この村の中にもまだ“人間らしさ”が残っていることに、少しだけ救われるような気もしました。

『ガンニバル』6巻ネタバレ

「ガンニバル」6巻

大悟はついに、後藤家の“地下牢”の扉をこじ開け、中へ踏み込みます。
けれど、そこには誰の姿もありませんでした――。

実は、恵介が大悟の動きを察知し、子どもたちを別の場所に移すよう指示していたのです。
間一髪で中はもぬけの殻。直後、地下牢には追っ手が迫りますが、恵介はなぜか大悟を逃がすという選択を取ります。

その後、大悟は“あの人”に襲われ、咄嗟に銃を発砲。意識を失って倒れ込むも、
目を覚ましたときには、神主の宗近が彼を助けてくれていました。

一方そのころ、署長は大悟の安否を案じ、部下たちに山中の捜索を命じます。

しかし、水面下では別の動きが――
なんと、村長と特殊班刑事の金丸が裏で繋がっており、村長は後藤家そのものを潰そうとしていたという事実が明らかに。

そんな中、恵介のもとに、すみれからの電話が。
彼女の口から出たのは、「妊娠した。あなたの子供よ」という衝撃の言葉――
揺れる恵介の表情には、ただの動揺だけでなく、**過去の“呪いの記憶”**が蘇っていたようにも見えました。

そこから描かれる過去の回想があまりにも重すぎて……胸が詰まりました。

恵介の母・藍は、もともと後藤家の地下牢で“家畜”のように育てられた存在。
銀の手で娘として育てられたものの、それは“あの人”との間に後継者を産むためだった――。

成人した藍は、銀の監視のもとで“あの人”に抱かれ、
やがて恵介と洋介を出産。
形式上は後藤清と結婚していましたが、清はなんと、幼少期に銀にだまされ、断種手術を受けさせられていたという信じがたい過去があったのです。

つまり、恵介と洋介の生物学上の父は“あの人”

その後、藍は「もう後継を産んだから用済み」として、銀から命の価値すら否定されます。
「死ねばいい」とまで言われてしまう。

そんな中、藍は地下牢で**“生きたまま食われていた子供・京介”を助け**、脱出を決意。
それを止めようとした銀に、幼い恵介が「母を殺すなら、僕が死ぬ」と訴えます。

母の命を守るため、京介を連れて藍は村を逃れました。
しかしその代償として、恵介は銀からこう告げられます――
「次に母に逆らえば、藍を殺す」

それ以来、恵介は“母の命”を人質に取られたまま、後藤家に忠誠を誓う人生を歩むことになります。

この一連の過去が明かされたことで、恵介がなぜこれまで村や“儀式”に抗いきれなかったのか、
その重さと悲しさがようやくつながってきました。

6巻の筆者の感想

いやもう……恵介の出生の秘密、想像以上に気持ち悪すぎました。

「母・藍が“あの人”に抱かれている場面を、銀が見ていた」という描写――
本当にゾッとしました。息をのむとか、言葉を失うとか、そういう次元を超えていて…。
“家族”という概念を完全に踏みにじった、異様でおぞましい儀式。

そして、村長でもある後藤清すらも銀に利用されていたなんて…。
子どもの頃に「病気だから」と言われ、断種の手術を受けさせられていたとか、倫理観も人権も何もかもがめちゃくちゃ。

“家”のため、“神”のためと称して行われてきた行為のすべてが、
人間としての尊厳を根こそぎ壊してくるような描写ばかりで、読んでいて本当に辛くなりました。

ここまでの設定を突き詰めて描いてくるガンニバル、
正直怖い。けど、やめられないんですよね…。

『ガンニバル』7巻ネタバレ

「ガンニバル」7巻

大悟が目を覚ましたのは、宗近によって運ばれた洞窟の中。
そこは、かつて「来乃神神社」の御神体として崇められていた、巨大な儀式空間でした。
岩肌の奥には無数の骸骨が積まれており、子どもたちが犠牲になっていた歴史が無言で語られています。

そして明かされる、村の忌まわしい言い伝え――
「後藤家の先祖がこの地に流れ着いた頃から、神社から死体が消えるようになった」。
つまり、“御神体”の正体とは、死体を喰っていた後藤家の歴史そのものだったのです。

そんな中、ついに始まる――奉納祭。

恵介はすみれと人目を盗んで再会し、想いを確かめ合うように強く抱きしめます。
けれど、後藤家の若い衆が常に見張っている。
「妻として迎えて、次期当主を産んでもらう」と嘘をついて、すみれを守るしかなかった恵介の姿には、
どうしようもない哀しさがにじんでいました。

一方その頃、村を包囲した金丸刑事率いる特殊部隊が、後藤家からすべての銃を回収。
緊張感が張り詰めるなか、突如として“あの人”が姿を現し、警官を1人殺害
そこから一気に――地獄のような銃撃戦が始まります。

後藤家と警察、双方が死者を出す中で、恵介はすみれを逃がそうと行動を起こします。
しかし、その直前に父・清が銃を撃ってくる。
激しく応戦する中で、清は恵介に向かって、「お前とは血がつながっていない」と真実を暴露。

それでも恵介は、“守るべきもの”のために戦い続けます。

結果、後藤家は多数の犠牲を出したものの、
岩男たちが警察部隊を容赦なく皆殺しにし、ついには金丸刑事にまで銃を向ける状況に。

いっぽうその裏では――
大悟と署長が、さぶの家に監禁されていた子どもたち3人を救出。
そこで、さぶの娘・加奈子は、自分の息子がまだ生きていたことを知り、涙ながらに抱きしめます。

ですが、ようやく訪れたその束の間の救いも、すぐに打ち砕かれる。
後藤家の別動隊が突如として襲撃し、警察数名が撃たれ、さぶも頭を撃ち抜かれて死亡。

救いと絶望が交錯する展開の中、
“供花村”という名の暗い闇が、さらに深さを増していきます――。

7巻の筆者の感想

警察の機動隊を相手に後藤家が制圧しちゃう展開、衝撃すぎました…。

いくらなんでも強すぎない?と思ったけれど、
老人たちを“弾よけ”にするという恐ろしい自己犠牲戦法と、
元・猟師たちの圧倒的な銃の腕前によって、あの機動部隊をねじ伏せたのかもしれません。

でもそれだけじゃない。
やっぱり大きかったのは、岩男と“あの人”の異常な戦闘力
銃撃戦の中で、ほとんど“怪物”のように暴れまわる2人は、もう明らかに人間の枠を超えてますよね…。
「本当にこいつら人間なのか…?」って、見ていて何度もゾッとしました。

そして何より辛かったのは、恵介が望んでいなかったはずの“戦争”が始まってしまったこと。

彼はただ、母・藍やすみれ、大切な人たちを守りたかっただけなのに――
気づけば銃声が鳴り響き、人が倒れていく地獄のような状況に巻き込まれていく。

止められなかった殺し合い。
これはもう悲劇という言葉じゃ足りないほど悲惨でした。

『ガンニバル』8巻ネタバレ

「ガンニバル」8巻

後藤家による突然の襲撃で追い詰められた大悟たち――。
絶体絶命の状況のなか、洋介が駆けつけて助太刀に入り、
どうにか龍二たちを制圧することに成功します。

しかし、その裏ではさらなる悲劇が進行していました。

ホテルに避難していた有希とましろが、
移動中に後藤家の人間によって襲撃・拉致されてしまったのです。

その知らせを受けた大悟は、怒りを抑えきれず、
後藤真の前で絶叫するように叫び声を上げます

一方その頃――
岩男に捕らえられていた金丸刑事は、
自らが後藤銀の兄・金次の孫であり、後藤家の正統な後継者だと名乗ります。

そして、銀や“あの人”がいかにして後藤家を築き、
村を支配するようになったのか――
その忌まわしい過去を岩男に語るのでした。

しかしその口は、永遠に閉ざされることになります。
真実を知ってしまった岩男は、金丸の首を素手で折り、口封じのために殺害

後藤家内部でも混乱が加速していきます。

恵介は「裏切り者」として真たちから追及を受けることに。
その時、清が現れ、「裏切りは自分がやったことだ」とすべての罪を背負い、
恵介を庇います。

――恵介は、その清の意志を汲み、自らの手で父を刺し殺すという
苦渋の選択をするのでした。

一方、大悟は洋介に**「人質のふり」をさせ**、
真や岩男に対し、有希とましろとの“人質交換”を提案します。

ついに両陣営は、坑道で対峙。

しかし、岩男は洋介の“裏切り”を見抜いていた…。
そして、緊迫した空気の中、銃声が鳴り響きます。

物語は、さらなる混沌へ――。

8巻の筆者の感想

清の最後、本当に胸が締めつけられました。
「自分を殺せ」と息子に言う父親――
その言葉の裏には、恵介を守りたいという強い想いと、
後藤家という呪縛から少しでも彼を解き放とうとする、父なりの覚悟があったように感じます。

血のつながりはなくても、
そこには確かに親としての愛情がありましたよね。

だからこそ、恵介がその想いを汲んで、
自分の手で清を殺す決断をする場面は、もう…言葉にならないほど切なかったです。

そして、後藤家の過去――
銀や“あの人”にまつわる秘密も、読み進めるほどに闇が深くて、
ドロドロすぎて、本当に精神が削られます…。

でも、知りたくなってしまう。
この村で、いったい何が起きてきたのか、真実を見届けたくなる。
ガンニバルの魅力って、まさにそこなんですよね。

『ガンニバル』9巻ネタバレ

「ガンニバル」9巻

緊張が極限まで高まる中、真が有希に向けて銃を発砲――
その瞬間、恵介がとっさに身を投じて銃弾の軌道を逸らす

裏切られたと激昂した真は、今度は恵介を撃とうと銃を向ける。
だがそこへ、恵介を守り抜くと誓って生きてきた岩男が割って入り、
怒りに任せて真を撲殺してしまう。

乱闘の末、ついに大悟は岩男の顔面と左目を撃ち抜き、その場に倒す。

…だがその時、静まり返った空気の中で聞こえたのは――
ましろの声。「ヤメテ」。
ずっと失語症だった彼女が、大悟の暴走を止めるように発した初めての言葉だった。

その言葉で大悟は我に返るが、
恵介は岩男の命を守るために、急所を外して大悟を撃ち、気絶させる。
重く、苦しい決断だった。

そこへ、“あの人”が現れる。

恵介が立ちはだかり、有希が石で頭を殴りつける
しかし、“あの人”は傷ついた姿のまま、有希がましろを守る様子を見て、
どこか懐かしそうに「かあちゃん」と呟き――
ましろを連れてその場を去っていった

間もなく、後藤家の者たちが現れ、倒れた大悟と岩男を担ぎ上げて連れ去る。
一方、有希はその場に置き去りにされた。

その後、宗近と村人の会話から、銀の死の真相が明らかになる。
なんと、彼女は村の若者たち――邦寿たちによって殺されていたのだった。

一方、監禁されていた大悟のもとに恵介が現れる。

「お前の娘は、俺が必ず助ける」
そう誓いを立てた恵介は、警備を倒して大悟を救出し、共に脱出を図る。

そしてついに、大悟は御神体の洞窟で“あの人”に銃を放つ
ましろのもとにいたその姿に、ためらいも怒りもない一発だった。

その頃、宗近は父・正宗から、“あの人”の本当の出自を知らされる。
“あの人”は、銀と正宗の子ども
そして、かつて差別されていた後藤家が、
銅の発見によって大地主となり、村で支配的立場に立つようになったという
歴史の因縁も語られるのだった――。

9巻の筆者の感想

ましろがついに…しゃべりましたね。

これまで言葉を発せず心を閉ざしていた彼女が、あの極限の状況で「ヤメテ」と叫んだ瞬間――
あれはただのセリフではなく、彼女の心の叫びそのものでした。
あの一言が、どれだけの重さを持っていたか…胸に迫るものがありました。

そして今回、明かされた「後藤家がかつては差別されていた存在だった」という事実。
つまり、今この村で起きている恐怖や狂気は、かつての被害者が加害者へと立場を変えた末に生まれたものだったのかもしれません。

呪いのように受け継がれてきた「食人の儀式」や、「あの人」の存在――
それらは後藤家が一方的に生み出したわけではなく、
村人たちの無関心と差別が火種だったと考えると、見え方が変わってきます。

“あの人”もまた、差別と孤独の中で生まれ育った犠牲者のひとりだったのかもしれません。
生まれながらにして怪物と呼ばれ、利用され、封じ込められてきた存在――
その視点で見ると、ただの“化け物”として切り捨てられないものがあります。

『ガンニバル』という作品には、人間の醜さ、狂気、そして連鎖する加害と被害の構造が詰まっています。
ただのサスペンスではなく、深く問いかけてくる物語なんですよね。

『ガンニバル』10巻ネタバレ

「ガンニバル」10巻

数十年前――銀というひとりの女性の悲劇は、差別と暴力のなかで始まります。

若き日の銀は非常に美しく、人目を引く存在でした。しかし、彼女は後藤家の当主・定と妾との間に生まれたことで、「けがれた血」として扱われ、人間として見てもらえませんでした。

銀は後藤家の正統な後継者・金次から毎日のように暴力と性的虐待を受けていました。村の人々からも差別され、銀の存在は村と後藤家の両方から排除されていたのです。

そんな銀に、ただ一人、心を開いた人物が正宗でした。銀と正宗は御神体が祀られた洞窟で何度も密会を重ね、銀は子を授かります。その子が、後に「あの人」と呼ばれる白銀です。

正宗は、この子のために村を変えたいと本気で考えていました。しかし、村人たちは彼の想いを拒絶しました。神職の血筋に“けがれた血”が混じることを恐れ、村人の一人・さぶは銀を殺そうとします。銀はさぶの頭を岩で砕き、逆に命を奪いました。

この事件のあと、銀は後藤家に引き渡され、村の総意で山に縛りつけられ、生贄として飢え死にさせられます。誰も彼女を助けようとはしませんでした。

けれど数か月後、銀は生きていました。生まれた子・白銀とともに、山の中で身を隠しながら、生きるために人を襲い、肉を食べて暮らしていたのです。

この背景には、銀の母の過去も重なります。銀の母は村の男たちの慰み者とされ、やがて飢饉の生贄にされようとしたところを定と金次に救われました。しかしそれは、救いではなく所有の始まりでした。

そして銀自身は、実は後藤家と血のつながりがないことが判明します。彼女は後藤家にも村にも居場所がなかったのです。

“怪物”とされた銀は、本当に怪物だったのでしょうか。それとも、怪物を生んだのは差別と無関心に満ちた村社会だったのか。

銀の過去は、ただのホラーでは終わりません。『ガンニバル』という作品が突きつけるのは、人間の持つ暴力性と、その連鎖の起源です。読むたびに、心の奥底をえぐるような痛みが残ります。

10巻の筆者の感想

銀の過去がここまで壮絶だったなんて、言葉を失いました。
毎日のように繰り返された強姦、周囲の誰からも守られず、人として扱われない日々。
読んでいて本当に気分が悪くなるほど、彼女が背負ってきたものは重く、痛ましいものでした。

そして、彼女の母親もまた、村の男たちに弄ばれ、最後は生贄として命を落とす…。
まるでこの村全体がひとつの“呪い”に取り憑かれているような、そんな感覚にさせられました。

そんな中で銀が「生き延びるために人を喰った」という行為も、ただの狂気ではなく、絶望と怒りの果てにたどり着いた“最後の手段”だったのかもしれないと思えてきます。

そして“あの人”の本名が「白銀(しろがね)」で、正宗との子供だったという事実――
すべてがつながっていく中で、物語の核にある“血の物語”がますます深く、重くなってきました。

白銀が金次の子供ではなさそうな描写からも、銀の愛と絶望のなかに生まれた存在であることが強調されていますね。
この村にとって、白銀の存在そのものが“罪”であり“救い”でもあったのかもしれません。

『ガンニバル』11巻ネタバレ

「ガンニバル」11巻

金次は山奥で衰弱した銀と赤ん坊(白銀)を見つけ、村人たちからの報復を恐れて2人を地下牢にかくまいました。
冷酷に見えた金次でしたが、実は心のどこかで銀に惹かれていたのかもしれません。

銀は、あの忌まわしき儀式で山に生贄として縛られた後、流れ者の“人喰い集団”に助けられて生き延びていたのです。
その集団には岩男の祖父もいたと言われており、彼らとの出会いが後藤家への“逆襲”を計画させるきっかけとなったのでしょう。

正宗はその後、銀が生きているという情報を人喰い集団のひとりから聞かされ、彼女からの伝言によって村人たちを扇動。
飢えに苦しんでいた村人たちは、怒りと欲望のままに後藤家を襲撃します。

結果、後藤家は壊滅状態に。金次の姉・紅も命を落としました。
しかしその代償は大きく、村人たちの多くも人喰い集団によって殺されてしまいます。

地下牢に閉じ込められていた銀の前で、瀕死の金次は息絶えました。
そして――銀と白銀は、金次の遺体を喰って生き延びたのです。

こうして銀は“正統な”後藤家を乗っ取り、彼女と人喰い一族によって“新しい後藤家”が誕生。
銀は生き延びた村人たちに「食料を与える代わりに、毎年子どもを生け贄として差し出せ」と命じました。
それが、あの忌まわしい生贄の儀式の始まりです。

白銀は人の肉しか口にせず、外に出ようとしないまま地下牢にとどまり続けました。
そして、やがて彼もまた“狂い病”を発症していきます。

正宗は語ります――
「かつて、狂い病を克服し、異常なまでに巨大化し、“来乃神が地上に現れた姿”=“現人神(あらひとがみ)”と呼ばれた者の記録がある」と。
白銀もまた、その存在に近づいていたのでしょう。

銀の死の直前。彼女が村人に撲殺されかけていたとき、白銀が姿を現します。
「かあちゃん」とつぶやきながら、銀の体にむしゃぶりつく白銀。
狂気とも思える行動のなかに、銀は“愛”を感じ取り、静かに息を引き取ったのです。

――そして、現在。

白銀に銃を向けた大悟の前に、ましろが立ちはだかります。
小さな体で、白銀をかばうように大悟の前に立つその姿に、言葉を失う大悟。
ましろは、白銀の中にも“何か”があると感じ取っていたのかもしれません。

その直後、恵介は銀の呪縛に囚われ、理性を失って大悟の腕を撃ってしまいます――。
止められなかった連鎖の中で、それでも人間は希望を見つけ出せるのか。
物語は、最終局面へと進んでいきます。

11巻の筆者の感想

後藤家がもともと“人喰い集団”だったなんて、あまりに衝撃的すぎる過去でしたね…。
ただの田舎の名家かと思っていたら、まさかその成り立ちからして“食人”をベースにしていたとは。物語が進むにつれ、背筋が寒くなりました。

そして、白銀にとって“食べる”という行為が“愛”の表現だとしたら…。
あの、銀の亡骸にすがるように食らいつくシーン――あれは本当に恐ろしくて、でもどこか神聖さすら感じてしまいました。

母の死を悲しむでもなく、涙を流すでもなく、“喰う”。
狂気のようでいて、彼なりの愛情表現だったのかもしれないと思うと、言葉を失います。

でも…正直、読んでいる側の倫理観はボロボロにされましたね。
普通の感覚ではとても受け止めきれない描写の連続。でも、それが『ガンニバル』の魅力でもあるんだと思います。
人間の理性と本能、そして愛と狂気。そのすべてが詰まっている――そんな物語です。

『ガンニバル』12巻ネタバレ

「ガンニバル」12巻

岩男が意識を取り戻したとき、最初に口にしたのは「恵介はどこだ」だった。
怒りと混乱のなかで、彼の頭の中には恵介への執着だけが残っていたのだろう。

岩男は宗近を殺そうと詰め寄るが、その場にいた正宗が「恵介のいる御神体へ案内する」と言い、なんとか場を収めた。

その頃、御神体の前では衝撃の儀式が始まろうとしていた。
縛られている大悟の横で、岩男たちはなんとましろを裸にし、岩に縛りつけ、“白銀”に食わせようとしていたのだ。
ましろを目の前にして叫ぶことしかできない大悟の怒りと絶望が痛いほど伝わってくる。

しかし――

ましろは、喰らおうとする白銀の目に浮かぶ涙を見て「泣かないで」と優しく言った。
その一言が、白銀の中に眠っていた人間の心を呼び覚ましたのかもしれない。
白銀は動きを止め、自分が今まで食べてきたのが“家畜”ではなく“人間”だったことに気づき、吐き出した。

恵介は、そんな白銀に向けて銃を構え、ついにその頭を撃ち抜いた。

混乱のなか、後藤家の男たちが恵介を殺そうとするが、白銀は最後の力を振り絞ってそれを止めた。
「生きる」――
白銀はそう言い残し、まるで“息子である恵介の中で自分が生き続ける”と言いたげに、自らの腕を食べながら息を引き取った。

白銀を継ぐ者として、恵介は人々の前で「ましろを救う」と宣言する。
それは“人喰いの血”の終わりを告げるようにも思えた。

だが、岩男は再び狂気に取りつかれ、大悟を殺そうと襲いかかった。
彼は恵介への記憶すら曖昧になり、白銀の遺体の頭部をバラバラにするという凶行に出る。

岩男は、人喰いの血を引く仲間たちに「この死体を食え」と命じた。
彼らは、まるで理性を失った獣のように、大悟へと群がってくる。

そのとき、恵介が自ら盾となって大悟を守った。
“父”と“子”の絆が、人間の良心として最後に残された壁になったのだ。

――数十年前。
後藤家と村人たちが壮絶な争いを繰り広げたあと。
正宗は銀に連れられて地下牢を訪れる。
そこには、後藤家に成り代わった“人喰い一族”の血をつなぐため、監禁された女性たちがいた。

そして数年前。
銀は恵介に語る。
「旧後藤家の人間――金次たちは、誰も人なんか喰ってなかった」と。

その言葉には、深い皮肉と、どうしようもない絶望が込められていたのかもしれない。
――後藤家の“呪い”は、後藤家が始めたものではなかったのだから。

12巻の筆者の感想

ついに、“あの人”――白銀(しろがね)がその命を終えました。
彼は最後、自らの腕を喰いながら静かに崩れ落ちていきました。

「喰うこと」が彼の中で“愛”や“つながり”を表す行為だったとしたら――
ましろを前にして自分を制したこと、自らの意思でその衝動を乗り越えたことに、彼なりの誇りがあったのかもしれません。
人間としての尊厳を、最後の瞬間に取り戻したとも言えるでしょう。

これでようやく、後藤家の呪いや恐怖の連鎖にも終止符が打たれる…
そう思ったのも束の間でした。

白銀の死を引き金に、今度は岩男が“本性”をむき出しにします。
彼こそが、人喰い一族の血をより強く色濃く引いた存在――
そして“狂気”の象徴として、物語の最終局面に立ちはだかるのです。

もはや誰も安全ではない。
止まったかに思えた恐怖の連鎖は、まだ終わっていませんでした。
岩男という新たな“ラスボス”の出現で、物語はさらに予測不能な展開へと突入していきます。

『ガンニバル』13巻ネタバレ

「ガンニバル」13巻

ついに迎えた最終局面――
大悟は岩男に命がけのタックルを仕掛け、恵介にましろを託してその場を離れさせます。
しかし、山を降りようとした恵介の前に、怒り狂った村人たちが立ちはだかります。
彼らに囲まれ、絶体絶命――そんな時、有希が警察を連れて駆けつけ、状況は一変。
村人たちはその場で逮捕され、有希とましろは涙の再会を果たします。

倒れ込む恵介のもとにすみれが駆け寄り、静かに涙をこぼします。

一方、大悟は岩男に追い詰められていました。
とどめを刺されかけたその瞬間、正宗が岩男の頭を銃で撃ち抜き、命を救います。
しかし、それでもなお岩男は倒れない。
頭部を半壊しながらも、本能と呪いに突き動かされてなお大悟を食らおうとします。
大悟は全力で岩男の首を絞め、その命を絶ちました。

正宗は「村人たちは後藤家を皆殺しにするだろう」と笑い、大悟は急いで後藤家へと向かいます。

その間に、正宗と宗近は後藤家の一族に食い殺され、
村人の河口尊――通称タケやんがマシンガンを手に、後藤家の老人や子どもにまで無差別な殺戮を行っていました。

英二を撃とうとしたその瞬間、村の少年・大樹が英二をかばいます。
そして、大悟が間一髪で現場に到着し、尊に手錠をかけました。

英二は復讐心に駆られながらも、自らの意思で銃の引き金を引かず、
その姿を見た恵介は、確かに“未来”をそこに見ました。

後藤家の生き残りたちは自衛隊によって逮捕され、恵介も連行されていきました。

すべてが終わったあと、大悟は有希とましろのもとに戻り、ようやく平穏な日常へと戻っていきます。

――数か月後。
供花村で起きた事件は、戦後最大の犠牲者数を出した悲劇として、連日報道され続けていました。
大悟は供花村での任務を終える準備を進めていました。

そんな彼のもとに、村の老婆が話しかけてきます。
老婆のニンマリとした笑みに、大悟は一抹の不安を覚えます。

その後、恵介と洋介に再会。
恵介は「罪を償い、すみれと子どもと前向きに生きる」と語りますが――
洋介は言います。「狩野さんが言った“この村は人を喰っている”という言葉、白銀だけの話だったのか?」

事件は終わったかに見えたが、真の終わりはまだ――。

白銀がいた地下牢には、誰かが爪で刻んだ「逃げろ」の文字が。
その直後、有希が自宅の柱に目をやると…そこにあったはずの「逃げろ」の文字が、「逃げルナ」に書き換えられていたのです。

そして、大悟と話していたあの老婆――
彼女の口から、ゆっくりと人間の指が覗いていました。

――『ガンニバル』、完結。
けれど、恐怖は…まだ終わっていないのかもしれません。

13巻の筆者の感想

超面白かった…けど、これは最高に後味の悪い終わり方でしたね。

あのラスト、老婆が人の指をくわえていたという描写――あれで一気に背筋がゾッとしました。
結局、食人の風習は後藤家だけでなく、村全体に根づいていたということなのでしょう。
つまり“食人族と入れ替わった後藤家”という物語の裏には、供花村そのものが深い闇を抱えていたという真実があったわけです。

大悟は表向きは任務を終えて村を離れる流れになっていましたが、
あの表情を見るかぎり、真実を突き止めるまで捜査を続けるつもりなのは明らかです。
まだ何かが、この村に潜んでいる――そんな予感を残していました。

事件は一応の決着を迎えたものの、
「本当にすべてが終わったのか?」という不穏さがラストまで付きまとうこの構成。
まさに“希望と絶望が入り混じったバッドエンド”でした。

それでも、これだけ心を揺さぶられるラストが描けるなんて、
やっぱり『ガンニバル』、凄すぎる作品だと思います。

後日譚『ガンニバル B話』ネタバレ

『ガンニバル』最終回のその後――
後藤家を襲撃し、多くの命を奪った村人・河口尊(かわぐちたける)が、警察で語った“後日譚”があまりにも衝撃的でした。

尊はかつて、暴力的な父親から「お前の子どもが奉納祭の生贄に選ばれた」と告げられました。
嫌がる息子に“村のため”と刷り込むように語り、尊は泣く泣く、自分の手でわが子を差し出したといいます。
その出来事がきっかけで、妻は家を出て行ってしまいました。

尊の中には、後藤家に対する怒りと憎しみが渦巻いていました。
それでも、供花村の穏やかな日々を壊したくなかった。
実は、かつて 大悟の家に「人殺し」とスプレーで落書きした犯人は、尊本人だったのです。
彼なりに「村の平穏を守る」ためにやったことだったのでしょう。

そんな中、大悟の行動によって後藤家の秘密が暴かれ、村全体を巻き込む大混乱が起こります。
尊はそこで村人から、さらなる衝撃の事実を突きつけられます。

――「お前の子どもは“選ばれた”わけじゃない。父親が自分から“生贄にしてくれ”と願い出たんだ」

怒りと困惑に支配された尊は、寝たきりの父を殺そうとします。
しかし、そこに入ってきたのは母。
そして語られたのは、あまりにも残酷な真実でした。

尊の息子を生贄にすると決めたのは、“優しかった”はずの母だったのです。
母は「嫁が気に食わなかった。2人の関係を壊したかった」と淡々と話しました。

その言葉を聞いた瞬間、尊の中の何かが完全に崩れました。
彼は母を殴り殺し、父の首を折って殺害。
そして、村の怒りを背負って後藤家襲撃の先頭に立ったのです。

――現在。
面会で尊と向き合った大悟は、深いため息をつきながらこう口にします。

「まだ終わっていない。
村の中には、人を喰い、誰かを犠牲にしてきた連中がまだいる。
俺は全員、捕まえるつもりだ」

物語は終わったはずなのに、
この村の闇は、まだどこかで脈打っているようです。

実写ドラマ『ガンニバル-2シーズン-』の全話ネタバレ考察解説はこちら

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